7名から20名超へ。京都発のスタートアップ・株式会社ランプは、事業も組織も急拡大するタイミングで、ミドルマネジメントレイヤー、ハイクラスプレイヤーなどの難易度の高いポジションの採用を同時に進める必要に直面していました。しかし当時、候補者に届けられる情報は「ほぼなかった」状態。そこでOTOGIは、採用広報戦略の設計から役員・メンバーインタビュー、座談会、プロダクト解説記事の制作、デザインまでを一気通貫で支援しました。
今回お話を伺ったのは、ランプの採用を担う土江有里奈さん(HRマネージャー/元マネーフォワード人材開発部長)と宮本広大さん(現MIXI SB事業本部HRBP / グループ会社HR管掌)。数百名〜数千名規模の企業で採用の最前線を見てきたお二人が、なぜ「拡散 / 認知獲得」ではなく「企業理解の深度をあげる」採用”狭報”を選び、支援を通じて何が変わったのか。採用の現場と社内に起きた”質の変化”と、OTOGIの支援への率直な評価を語っていただきました。
土江 有里奈さん| HRマネージャー
大学卒業後、営業職を経てネオキャリアへ中途入社し、組織拡大期における新卒採用を担当。マネーフォワードでは新卒採用をゼロから立ち上げ、採用部副部長を経て、組織800名規模の時期に人材開発部長を務める。グロービスで組織開発の提案営業に従事した後、2025年8月にランプへ1人目人事として入社。採用・労務・人事評価制度・組織開発全般を担う二児の母。
宮本 広大さん|現MIXI SB事業本部 HRBP / グループ会社HR管掌
新卒でサイバーエージェントグループに入社し、新規事業開発・人事を経験。人材系スタートアップのRECCOOを経て、ラブグラフ執行役員CHROに就任し、MIXIへのグループインを経験。その後MIXIへ転籍し、本社HRBPを牽引するとともに、投資先のPMIやHR起点のグロース支援、子会社HRを管掌。現在は業務委託としてランプの採用・組織づくりに携わる。
7名から20名超へ。「候補者に届けられる情報が、ほぼなかった」

まずは貴社について簡単にご紹介ください。
土江: 株式会社ランプは、「地域社会を灯す」をミッションに掲げる京都発のスタートアップです。飲食店向けのテイクアウト注文受付・管理SaaS「テイクイーツ」を主軸に、飲食・小売業界に特化したAIプラットフォーム「Ritel」を展開しています。どこに住んでいても豊かな選択肢を持てる社会をつくるために、地域の食産業をテクノロジーでアップデートしていく会社です。
採用広報を実施する前、どのような採用課題がありましたか?
土江: OTOGIさんにお声がけしたのは、会社が7名から20数名へと大きくなり、事業も組織も大きく変化するタイミングでした。短期間で、ミドルマネージャーやハイクラスプレイヤーといった難易度の高いポジションの採用を複数、同時に進めなければならない状況だったんです。
一方で当時、外に出ていた情報は代表についてと事業関連の発信が一部ある状態。それ以外のコンテンツはほぼない状態でした。候補者からすると、面談の前に「どんな会社なのか」「どんな人が働いているのか」「どこに向かっていくのか」を知る手段が全くない。それをどう発信していくべきか、というところに課題を感じていました。
宮本: 執行役員レイヤーといった中核人材がだいぶ埋まってきたタイミングだったので、その配下のミドルマネジメント層や即戦力となるハイクラスプレイヤーを採用していくという方針が、当時の判断としてありました。
そのためには、加速度的に「採用フィールドで戦える武器」を作っていかなければならない。でも、内製化するほどの時間も労力も割けないし、正直、経験値としても足りない。そういう状況でした。
忙しい中で採用広報に力を入れようとした理由と、弊社をお選びいただいた理由を教えてください。
土江: きっかけは宮本さんからのご紹介でしたが、実は宮本さんからはたくさんの会社をご紹介いただいていて、状況に応じてお断りすることもたくさんありました。その中でOTOGIさんに依頼したのは、「企業理解の深度をあげて態度変容を狙う”採用狭報”」というコンセプトが、当時のうちのフェーズと採用課題にすごくマッチしたからでした。
工数的にも、大量にコンテンツを作り続けられるフェーズではなかった。だからこそ、自分たちが認知してもらいたい候補者に的確に刺していく必要があった。そこに、うちの会社に合わせてどう設計するかを本当にアジャストしてくださる姿勢があって、テーマ感も含めて「素敵な会社さんだな」と感じたのが大きかったです。
もうひとつ、話を聞いた時の心情として印象に残っているのが、「記事を書きます」「工数を削減します」ではなく、「その後、自分たちでどう回していくか」まで考えてくださっていたことです。会社のアセットとして残すという思想は、他ではあまりないのかなと思いました。
宮本: 補足すると、OTOGIさんは、スタートアップや地方セグメント、ネームバリューのない会社であっても、その会社の魅力や事業構造といったコンテクストをきちんと捉えて、適切にメッセージングをしてくださる実績をお持ちでした。そこに対する安心感、安堵感がありました。
採用の現場としてもかなりアップアップになっていましたし、経験値の面でも、できれば社内アセットとしてきちんと積み上げていきたかった。そのあたりを一緒に伴走してくれるパートナーとして、OTOGIさんが最適なんじゃないかと思えたんです。
「アセット」というのは、デザインの元データや写真といった素材も含めて、という意味でしょうか?
土江: そうですね。デザインの元データや写真といった素材もそうですし、会社の事業構造やターゲットといった観点から設計を考えてくださっているので、次に自分たちで採用広報をする時に、どういう視点で見ればいいのかまで見えてくるんです。「OTOGIさんが設計する時はこういう観点で考えているから、自分たちがこれから走り出す時はこうすればいい」という助走をつけていただいた感覚がすごくありました。

※OTOGIが提供したデザインの元データ
宮本: これは制作会社さんも、コンサルも、伴走支援型のサービスなら皆さん悩まれるポイントだと思うんです。LTVを上げたい、チャーンしたくないから、あまりアセットとして残したくないという会社さんも往々にしてある。でもOTOGIさんは、伴走期間の中で最大限その会社のアセットになるために、思考プロセスまで共有してくれるし、元データもローデータも以後活用しやすい形で渡してくれる。もし伴走が終わっても、その会社がインハウスでやっていく覚悟を持った時に、一定まで補助線として使えるものをきちんと残してくれる会社さんだと、ご一緒して改めて強く感じました。
ポイントは面談・面接前にいかに”共通認識を持たせられるか”

採用の現場では、どのような変化がありましたか?
土江: 私は基本、カジュアル面談を担当しているのですが、最初のアイスブレイクからかなり変わりました。以前は情報がほとんどなかったので、こちらが履歴書・経歴書を見ながら「この方には子育てとの両立の話をしようか」と考えて話を振っていた。今は私の記事も出ているので、候補者の方から「そういえば、お子さんがいらっしゃって働かれているんですよね」と始まってくれる。
また、選考回数も時間も限られている中で、事前情報をキャッチアップしていただいているため、双方の質問がだいぶ短縮できています。本来聞きたかったこと、見極めたかったところにフォーカスして話せている感覚があり、この空中戦(採用広報)と地上戦(面接)の掛け合わせで歩留まりが変わってくるんだなと感じています。
候補者の方からの声はありましたか?
土江: まず「記事を見ました」という声が本当に多いです。皆さんすごく見てくださっている。「どんな人と働きたいか」というテーマの記事も作ってくださっていたので、それを見て「自分の経歴と合うかどうか、ぜひ話したいです」という前提で来てくださる方もいます。組織カルチャーやプロダクトに対しての思想について言及いただけることも多々あり、カルチャーフィットの観点で読み取ってくださった感想を複数名からもらっています。
スカウトの運用面ではいかがでしょう?
宮本: スカウトを打つ際に、必ず「類似メンバーの記事」や「次に面談する人の記事」をシェアできるようになったのは大きいです。これまで共有できるものはカルチャーデックくらいしかなく、人によってカスタマイズもできなかった。今はセグメントを切って、「エンジニア職種にはこの人のこの記事をぶつけよう」と、より刺さる形でポンと乗せられる。本文側に情報を盛り込まなくていいので、スカウト文章自体もシャープになりました。実数値では測りかねていますが、感覚値として運用しやすくなり、よりシャープに届いていると感じます。
候補者の企業理解度の変化についてはいかがでしょう?
宮本: 非常にあがっていると感じます。特にハイレイヤーの方々に期待することは、これまでの経験とケイパビリティを今のランプにどう活かせるか?だと考えています。つまり、いかに早く会社としての課題やこれから目指す姿、戦略を伝えておくかが重要だと言えます。
各部署ごとの事業戦略や課題、プロダクトの思想や現在地などが記載されている記事を事前に送っておくと、キャッチアップした上で共通言語を持って話せる。よりコアな質問を準備して面談に挑んでいただいていたり、今のランプをどう見ているのか、どう伸ばしていくのかといった期待している課題や戦略についての話にボリュームを持たせることができています。これは、事前情報として記事を送り、共通認識を面接前に作れていた効能だと思います。
「毎回楽しみで、すぐ見ています」――社内に起きた変化

採用以外に、社内への影響はありましたか?
宮本: 私は業務委託として関わっているので、記事の校閲をさせてもらう中で、自分が採用に携わっていなかった方々のことも知ることができました。どういう思いで選んだのか、どういうルーツがあるのか、どんな葛藤を経て今のランプに飛び込んできてくれたのか、そこで描いている野心や野望はなにか。そういったものが記事化されていくことで、その人の人となりに触れる機会を社内にも作ってくれた。インナーブランディングとまでは言いませんが、特に外部パートナーである業務委託の立場からすると、採用戦略に活かせる一次情報を知ることができるのですごくポジティブでした。
もうひとつ。インタビューを受けた側のメンバーは、外部のパートナーに対して自分のキャリアや価値観の形成プロセス、今思っていることを包み隠さず話していく中で、自己内省ができた人が多いんじゃないかと思っています。在籍年数が経った人は「このランプで働く意味・意義」を改めて考えたり、代表から日々聞いているミッションと自分のミッションを重ねたり。自分のキャリアを棚卸しする機会って、転職かこういうインタビューを受ける時くらいしかないですからね。そういう意味で、いいキャリアの棚卸しにもなっていたと思います。
社内からの声はいかがでしたか?
土江: インタビューを受けた側からは、まさに今宮本さんが言ってくれたように「自分の内省につながった」「棚卸しできてよかった」という声がありました。そして社内メンバーからは、「毎回楽しみで、シリーズが出たらすぐ見ています」という声をもらっています。
ランプは京都と東京に拠点があって、業務委託の方も多く、業務上の接点はあっても内情まで見きれないところがある。「実は知らなかったけど、近い考えを持っていた」「あの人はあんな考え方をしていたんだ」と、記事を楽しみにしてくれている人がいました。距離や部署が離れていても、その関係性を繋ぎ止めてくれる結節点的な役割も果たしてくれています。
元マネーフォワード・現MIXI人事が語る、「採用広報」という領域の可能性
HR経験の長いお二方から見て、採用広報という領域についてどう感じますか?
土江: あまりやれていないか、あるいは皆さん兼務でやっていることが多い印象です。前職のマネーフォワードは結構特殊で、デザイナーが一緒に入って、ブランドの論点も含めて採用広報をやっていたんですが、そこまでやれている会社はほぼないと思います。採用の延長線上にあるけれど、表現、ブランド、デザイン───延長線上だけでは留まらない志向性がいる領域。だからプロフェッショナルはなかなかいないのだろうな、という感覚はあります。
宮本: 採用広報はこれからどんどんニーズが出てくる領域だと思う一方で、予算から省かれやすい領域だとも感じています。年間予算の中に組まれていなくて、「どこから持ってくるんだ」という割り振りのないところから始まってしまう。それに成果指標との紐付けが難しく、応募者数といった先行指標にどれくらい寄与したかも、相関は出ても因果は出しにくい。「採用広報の予算はすごく難しい」というのは、ずっと続いている命題だと思います。
でも、OTOGIさんが大事にされている採用「狭報」という考え方は、人事を救える施策だと思っていて。釈迦に説法ですが、企業側は選ぶ時代から選ばれる時代になっている。そうなった時に、選ばれる側の前提条件は「企業理解ができる情報提供」となります。採用サイト内の情報でも問題はないと思うのですが、採用サイトは複数あるポジション、レイヤーすべての方に一定の理解を提供する場として終始する傾向にある。ただ今求められているのは、「ポジションごとの深い企業理解」です。まずここができていないと、候補者はその企業を選ぶこともできません。
また、採用で最も重要だと考えている一つにキャンディデイトジャーニーがあげられます。初期接点で認知を取り、態度変容・行動変容を生んで足を運んでもらい、どうアトラクトしながら、どんなアセスメント基準・プロセスで温度感を醸成し、第一志望群から第一志望へ切り替え、意思決定してもらい、オンボーディングまで最適化するか。この採用局面の全体設計において、OTOGIさんのサービスは「どこにでも使える」汎用性をはらんでいると思っています。
予算を握っている人事責任者や経営層に「これはすごく大事なことなんだ」と伝わるように、もっと啓蒙していかなければいけないと、僕自身もいち当事者として思います。単なる「広報予算」ではなく「採用していくために必要な予算」として用意できる会社こそが本質だと言えるように変革できたら、このマーケットはもっと良くなるし、企業と求職者の双方にとって、より良いマッチングになっていくと思います。
インナーブランディングにも使える、というお話がありました。
宮本: はい。この会社・このチームでやる意義、このメンバーと一緒にやる意義を再調整するために、採用をブーストするコンテンツというよりは、社内をリブーストさせる使い方も全然あり得ます。人を採用するには獲得コストがかかるし、離職されるとオンボーディングからやり直しになる。トータルコストで考えれば、今いる人たちをどう輝かせ続けるかは重要なテーマです。社員数が少ない会社なら、一人ひとりのタレント性を引き出す記事を作って社内に流通させる。個々人の思想や価値観形成のプロセスを外部の人がヒアリングして”自分史”として可視化し、今掲げている野心とつなぎ合わせる。土江さんもおっしゃっていた、距離や部署が離れていても、その関係性を繋ぎ止めてくれる結節点的な役割も果たしてくれる。
土江: マネーフォワードが300名から500名くらいのフェーズになった時、「採用広報で一番何が良かったか」を振り返って、結局エンゲージメントが上がったよね、という結論になった記憶があります。その規模になると「隣の芝が分からない」状態になるんです。あの人はあんな想いでやっている、というのが見えていたところから、隣のチームが何をしているか、何に向かっているか分からなくなる。そこで社内で記事を書いて横に展開すると、見えないものが見えてくる。「こんなにも同じ気持ちを持っている人がいるんだ」「自分の部署だけの空気じゃなくて、隣も一緒なんだ」という連帯感が生まれた。もちろん採用にも貢献してくれていましたが、社内エンゲージメントも上がった、というのが当時の総括でした。
宮本: MIXIのようなコングロマリット企業だと、1本部で300〜400名いて、本部ごとにHRBPがついています。本部内の求心力を上げる、関係が希薄になっているところをつなぎ止めるための施策として、本部予算が出る可能性は全然あると思いますね。

「アウトプットではなく、アウトカム思考」――OTOGIの支援への率直な評価
最後に、弊社の支援について、良い点も悪い点も含めて率直にフィードバックをいただけますか?
土江: ネガティブなことがなさすぎて、ポジティブなことしか言えませんが、、、(笑)。総評として思っているのは、「制作して納品してもらう」という感覚よりも、一緒に考えて伴走してくださったということ。コンテンツをどうするかの話の中で、採用計画や今の組織フェーズ、うちの組織の課題まで、かなり深い議論になりました。うちの弱みも全部さらけ出しつつ、それを次にどうしていきたいのかを私たち自身が考えるきっかけにもなった。採用広報に閉じず、採用戦略という大上段から深い議論をしていただけたと感じています。
コンテンツのクオリティも、どう見せるかをすごく検討してくださっていて、作ってくださるものを毎回、私自身が楽しみにしていたくらいです。あとありがたかったのはデザイン面ですね。あんなにうちの会社のデザインにアジャストさせてくれるのは、すごいことだと思います。うちのデザイナーはこだわりが強いタイプなんですが、ほとんどフィードバックが返ってこなかった。彼が「いいよ」と言うこと自体、社内でもあまりないことなんです。デザイン面は論理で理解することはできてもアウトプットはずれることが多い領域で、こんなにも完璧にアジャストしてくれる。人事では到底やりきれない、スキルとしても持っていない領域なので、このカバー力は本当に助かりました。
宮本: 制作会社さんは基本的にアウトプット(納品)主導ですが、OTOGIさんはアウトカム(成果)から逆算して考えてくださっている。サービスの全体構成もそうですし、実際に一緒に進めていく協業プロセスからもそれが伝わってくる。組織基盤がどれだけ大きくなっても、そこは貫いてほしいですね。
特に上段の採用広報戦略は、その会社を丸裸にして理解しながら正しいラベルを貼り、優先順位をつけて適切に発信していく、超難易度の高いコンセプチュアルスキルが必要な領域です。それを誰しもができる再現性として一定作られているのは素晴らしいし、最高だなと思っています。個人的にも、初動時のマインドマップからキーワードを抽出し、コアを見つけて掛け合わせ、採用広報戦略の上段を組み立てていくプロセスはすごく勉強になりました。人事経験は長いですが、採用広報をコアにやってきたわけではなかったので、めちゃくちゃありがたい時間でした。
ニーズはこれからどんどん広がっていくと思います。クライアント数が増えても、社員が増えても、品質を落とさずにこの再現性モデルでやっていける教育スキームまで含めて実現してもらえたら、採用広報というマーケットの見方が、OTOGIさん起点で変わっていくんじゃないか。マーケットを変えられるポテンシャルと思想を持っている会社さんだと、個人的には思っています。
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